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『学びとは何か――〈探究人〉になるために』はおすすめ本

2016年04月05日 -

『学びとは何か――〈探究人〉になるために』という本を読んだ。

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本書では主に認知心理学の研究から分かった学びのメカニズムや熟達のコツを分かりやすくまとめている。紹介されている内容はOECDがまとめた『脳からみた学習』や、ベストセラー本『上達の法則』などで既出のものが多い。しかし、本書の特色は先のような本で紹介された事実を、単に事実の紹介に留めず、そこから「知識とは何か、学びとは何か」という問いへの答えにつなげていけるよう体系化していることにある。

著者は、一般的な知識観を「ドネルケバブモデル」と呼ぶ。知識は真実の部分的な情報であり、学ぶということはケバブのような真実の塊から部分を削りとっていくことだという考え方である。著者はドネルケバブモデルの知識観は現実の学習や知識のあり方に即していない知識観であると主張する。

知識はシステムの一種であり、学習者の思考を現実のデータに照らして複雑なネットワークを作り出す。例えば子どもは母語を学ぶ時、<正しい母語>なるものの断片情報として単語や文法を学んだりはしない。むしろ、子どもは生活のなかで親が話している言葉をまね、自分なりのルールで使っていくうちに母語を習得していく。学習とは外にある体系から知識を吸収していくことなのではなく、試行錯誤を繰り返して現実に通用する、自分なりの知識体系を作り出していくことなのである。そう著者は主張する。

本書は学習理論を分かりやすく紹介する本としては突出している。近年の学習に関する研究の知見を紹介する本は無数にあるものの、それが全体として何を意味しているのかを提示する本はなかなかない。何かをより良く学び、熟達したいと考えている人にはまず最初に手にとって欲しい本だ。


著者紹介

名前:常川真央

筑波大学図書館情報学メディア研究科で図書館情報学を学ぶ。2014年4月より専門図書館員としてとある研究所に勤務。RubyとJavaScript使い。短歌の鑑賞と作歌が趣味です。

業績 : http://researchmap.jp/kunimiya

連絡先: tkunimiya@gmail.com

Twitter: @kunimiya


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