本書『紛争と国家形成』は中東とアフリカにおける紛争を分析したもので、アジア経済研究所での研究会の成果を書籍としてまとめたものである。本書の特徴は、紛争を単なる災厄と見るのではなく国家が形成されるまでのプロセスとみなす点である。これまで中東・アフリカの紛争は取り除くべき災厄であり、外部から武力介入を行い、民主的な国家をトップダウンに建設するというアプローチで解決が図られてきた。しかしながらイラク戦争終結後の処理をみれば分かるように、事はそううまく運ばない。政治は常に偶発的な事象に左右され、介入国が望むような理想的な過程で国家は再建されない。本書では国家形成という概念を中心として、国家が誰かの手によって設計されるものではなく偶発的な事象の帰結であると捉え、紛争が国家の形成にどのような効果を与えたのを分析することで新たな紛争解決手段を探っていく。
国家を自然現象のようにみる考え方が面白いとおもって手にとったのだが、いかんせん中東・アフリカの知識が足りずなかなかページを進めることができなかった。ただパラパラ拾い読みするだけでもなかなか面白い。まさかイラク戦争後の治安維持がああいう形で行われているとは知らなかった……。紛争がなぜ起こるのかを考えたい人におすすめ。
名前:常川真央
筑波大学図書館情報学メディア研究科で図書館情報学を学ぶ。2014年4月より専門図書館員としてとある研究所に勤務。RubyとJavaScript使い。短歌の鑑賞と作歌が趣味です。
業績 : http://researchmap.jp/kunimiya
連絡先: tkunimiya@gmail.com
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